やんばる(=山原)とは「山々が連なり森の広がる地域」を意味する言葉で、亜熱帯照葉樹林の森が広がる沖縄本島北部のことを指しています。特に国頭村、大宜味村、東村の3村を中心とする一帯は、ノグチゲラやヤンバルクイナをはじめとする多くの固有種が生息し、生物学的にまとまりのある森林が比較的健全な状態で残っており“奇跡の森”とよばれています。
2017年に行われた「奄美・琉球世界自然遺産候補地科学委員会」において奄美大島、徳之島、沖縄本島北部および西表島の4地域が推薦候補地として選定され、2021年7月26日に日本で5番目の世界自然遺産として登録されました。
特徴1:亜熱帯照葉樹林
やんばる地域は北緯27度付近に位置し、世界の同緯度の亜熱帯地域は砂漠や乾燥地帯が多いのに対し、琉球列島は赤道直下から流れてくる黒潮と梅雨前線や台風により、暖かく雨の多い亜熱帯海洋性の気候となっています(年間降雨量約2,500mm)。この気候が豊かなやんばるの森をつくり、その森が多くの生物を育んできました。
やんばる地域における森林率は80%以上で、最も広い面積を占めている自然植生はスダジイやオキナワウラジロガシなどのブナ科植物に代表される亜熱帯常緑広葉樹林です。
特徴2:生物多様性
やんばる地域は、日本全体の0.1%にも満たないわずかな面積の中に、実に多様でユニークな生き物たちが互いに密接につながりあいながら複雑な生態系をつくりあげています。日本全体で確認されている生物の種数に対して、鳥類では約半分、在来のカエルのうち約4分の1の種類が確認されるなど、高い割合を占める動植物の種が生息・生育しています。
特徴3:やんばる固有の動植物
やんばる地域は、ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、ケナガネズミ、オキナワトゲネズミ、オキナワイシカワガエル、ヤンバルテナガコガネなどたくさんの固有種が生息しています。一部高標高地では雲霧林が発達し、着生のシダ植物やオキナワセッコクなどのラン科植物が生息しています。河川上流から中流の渓谷沿いには熱帯・亜熱帯に特長的な渓流植物が分布し、やんばる固有の両生類の産卵・生息環境になています。